社労士の資格者でダブルライセンスを目指す人は少なくありません。なかでもコンサルタントとして独立を目指す人には、中小企業診断士をおすすめします。中小企業診断士は経営コンサルタントの国家資格ですので、社労士の労務管理の専門性と併せて企業を経営と人の両面からサポートできるようになります。
中小企業診断士の資格者で独立したいと考えている人にとっても社労士とのダブルランセンスはおすすめできます。中小企業診断士には企業内診断士が多いですが、社労士とのダブルライセンスでコンサルタントとして対応できる領域が広がり、独立に役立ちます。
ここでは中小企業診断士の資格についてご紹介します。
中小企業診断士とは
中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。法律上の国家資格として、「中小企業支援法」第11条に基づき、経済産業大臣が登録します。
中小企業診断士制度は、中小企業者が適切な経営の診断及び経営に関する助言を受けるに当たり、経営の診断及び経営に関する助言を行う者の選定を容易にするため、経済産業大臣が一定のレベル以上の能力を持った者を登録するための制度です。 中小企業基本法では、中小企業者が経営資源を確保するための業務に従事する者(公的支援事業に限らず、民間で活躍する経営コンサルタント)として位置づけられています。
(日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士制度」より)
中小企業診断士は企業の現状を分析して、成長戦略の策定や実行のアドバイスをすることが主な業務です。 中小企業診断士には専門的知識を活用したアドバイス業務から、企業と行政、企業と金融機関などとのパイプ役、中小企業への施策の適切な支援まで幅広く対応できる知識や能力が求められます。
経営コンサルタントとして活動する中小企業診断士は約半数で、残りの半数は、一般企業や金融機関などに勤務する企業内診断士です。独立系の中小企業診断士は他の士業と比較すると少なくなっています。
中小企業診断士の知識はさまざまなビジネスシーンで活用できますので、営業職やマーケティング、経営スタッフ、ITコンサルタントなど多くの職種で活かされています。
中小企業診断士の職業
- プロコン経営(他資格兼業なし):28.5%
- プロコン経営(他資格兼業あり):17.5%
- コンサルティング会社等勤務:2.3%
- 公務員:1.3%
- 公的機関・団体等:4.5%
- 調査・研究機関:0.6%
- 金融機関:6.8%
- 民間企業(金融機関を除く):33,2%
- 資格は持っているがコンサルティングの活動も勤務もしていない:1.7%
- その他:3.3%
- 無回答:0.2%
(日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果より)
中小企業診断士になる流れ
中小企業診断士になるには、まず中小企業診断士第1次試験に合格することが必要です。 第1次試験に合格後、中小企業診断士として登録されるには2つの方法があります。
- 中小企業診断士第2次試験に合格して、実務補修を修了するか、診断実務に従事する
- 中小企業基盤整備機構または登録養成機関が実施する養成課程を修了する
中小企業診断士試験から登録まで
- 中小企業診断士第1次試験⇒中小企業診断士第2次試験⇒実務実習または診断実務従事⇒中小企業診断士登録
- 中小企業診断士第1次試験⇒中小企業基盤整備機構または登録養成機関が実施する養成課程
中小企業診断士試験
中小企業診断士試験は「中小企業支援法」に基づく国家試験です。 中小企業者が適切な経営の診断および経営に関する助言を受けるにあたり、経営コンサルタントの選定を容易にするため、経済産業大臣が一定のレベル以上の能力をもった人を登録するための制度です。 第1次試験(選択式)と第2次試験が実施され、第2次試験の合格者には口述試験(面接)が行われます。 科目合格制がとられていて、3年間で7科目に合格すれば第1次試験合格となり、第2次試験の受験資格を得ることができます。
第1次試験
中小企業診断士になるために必要が学識を有しているかどうかを判定するために、企業経営に関する7科目の筆記試験(多肢選択式)を行います。
- 受験資格:制限なし
- 試験日:8月
- 試験地:札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇
- 試験内容:筆記試験(多肢選択式) ①経済学・経済政策 ②財務・会計 ③企業経営理論 ④運営管理(オペレーション・マネジメント) ⑤経営法務 ⑥経営情報システム ⑦中小企業経営・中小企業政策
- 科目免除:申請により試験科目の一部が免除されます。 ・科目合格による免除 ・他資格等保有による免除
- 合格率:30%程度
第2次試験
第1次試験の合格者について、中小企業診断士となるために必要な応用能力を有するかどうかを判定するために、診断および助言に関する実務の事例並びに助言に関する能力について、筆記試験と口述試験を行います。
- 受験資格
・筆記試験:第1次試験の合格者(第1次試験合格の有効期間は2年)
・口述試験:第2次試験筆記試験の合格者 - 試験日
・筆記試験:10月
・口述試験:翌年1月 - 試験地:札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡
- 試験内容
・筆記試験:中小企業の診断および助言に関する実務の事例について
・口述試験:試験官との質疑応答 - 合格率:18%程度
合格基準
- 第1次試験の合格基準は、総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満のないこと
- 科目合格の有効期間は3年間
- 第1次試験の有効期間は2年間
中小企業診断士実務補修
中小企業診断士実務補修は中小企業診断士試験合格者を対象に15日間の実習方式で行われます。 この実務補修は1グループを受講者6人以内で編成し、指導員の指導のもと、実際に企業に対して、経営診断・助言を行います。3つの企業に対して、現場診断・調査、資料分析、診断報告書の作成、報告会を行います。
中小企業診断士として正式登録するためには、中小企業診断士第2次試験合格後、3年以内に実務補習を15日以上受けるか、診断実務に15日以上従事することが必要になります。 在職中の人は仕事との日程調整が必要になります。
問い合わせ
一般社団法人 中小企業診断協会
中小企業診断士養成課程
中小企業診断士養成課程は、中小企業基盤整備機構(中小企業大学校)または登録養成機関で実施しています。 約6ヵ月の養成期間を修了すると、中小企業診断士「第2次試験の合格」と「実務補習」に代わるものとして、中小企業診断士の登録資格を得ることができます。 費用と時間が捻出できれば、半年間でほぼ確実に中小企業診断士の資格を取得できる方法といえます。
応募条件
- 中小企業診断士第1次試験の合格者
- 2年以上の実務経験者
- 6ヵ月の研修が受講可能であること など
選考方法
- 書面審査:設定されたテーマについての小論文
- 面接審査:書面審査の合格者に実施
研修内容
- 研修課目:中小企業診断士養成課程のカリキュラム
- 授業:演習と実習
- 修得審査:修得水準の審査基準により審査
- 修了要件:評価基準を満たすこと
研修場所
中小企業基盤整備機構の場合:中小企業大学校 東京校(東大和市)※入寮可
中小企業診断士試験の勉強法
中小企業診断士試験に合格するには、独学や通信・通学講座で勉強する方法があります。 第1次試験と第2次試験、科目合格の状況によって最適な方法は変わってきます。
資格の取得期間
第2次試験までの合格準備期間としては、2~3年が多いようです。 第2次試験は対策期間が短い1年目は不利になりやすく、多くの場合、2年目の受験で合格を目指すのが標準的になっています。
独学
第1次試験は独学でも合格を目指すことができます。 第2次試験の対策では情報収集も重要ですので、勉強会などに参加する人が多いようです。
【メリット】
【デメリット】
通信講座
通信講座にはWEBやDVD講座、スクーリングなど通学に近いスタイルで受講できる講座が増えています。
【メリット】
【デメリット】
通学・資格スクール
通学・資格スクールにはさまざまな講座がありますので、自分に合ったコースを選択することが大切です。
【メリット】
【デメリット】
まとめ
申請や手続きの独占業務がある社労士に対して、コンサルタント資格の中小企業診断士は独立してすぐに経営者にアドバイスができるようになるわけではないでしょう。 社内で経験を積んでスキルを磨いたり、社労士とのダブルライセンスでコンサルタント力を強化することをおすすめします。
社労士資格取得の意義についてはこちらの記事でご紹介します。