社会保険労務士試験は8科目で行われ、幅広い範囲から出題されます。短期合格を目指すためには、それぞれの試験科目で効率的に学習を進める必要があります。市販されている基本テキストや社労士講座の教材は出題傾向に合わせてまとめられていますが、それでもかなりのボリュームです。
短期合格を目指す場合はテキストの内容を隅々まで理解しようとするよりも、試験に出やすい項目について重点的に学ぶことをおすすめします。私は短期合格のために出題傾向に合わせてかなりメリハリをつけて学習を進め、結果的に1回の受験で合格することができました。
科目ごとに優先した学習項目を表にまとめましたので、ここでは労働者災害補償保険法と雇用保険法についてご紹介します。
社会保険労務士の試験科目
社会保険労務士試験は午前に選択式(80分)、午後に択一式(210分)が行われます。
合格基準点は満点の7割以上ですが、試験結果を総合的に勘案して補正が行われます。それぞれの科目ごとに定められ、合格発表日に公表されます。
試験科目 | 選択式 | 択一式 |
労働基準法及び労働安全衛生法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
労働者災害補償保険法 (徴収法を含む) |
1問(5点) | 10問(10点) |
雇用保険法 (徴収法を含む) |
1問(5点) | 10問(10点) |
労務管理その他の労働に関する一般常識 社会保険に関する一般常識 |
1問(5点) 1問(5点) |
10問(10点) |
健康保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
厚生年金保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
国民年金法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
合計 | 8問(40点) | 70問(70点) |
労働者災害補償保険法
労働者災害補償保険法は、業務上の事由または通勤による労働者の災害に対して必要な保険給付を行うことを規定した法律です。業務上または通勤により負傷や疾病にかかった労働者や遺族への保険給付、社会復帰の促進、適正な労働条件の確保等を図り、労働者の福祉の増進に寄与することを目的としています。
出題傾向
「労災」の科目ですので、保険給付に関する出題が多く、制度についてしっかり理解することが重要です。改正点もしっかりチェックしておく必要があります。難しい問題もありますが、多くは基本事項から出題されます。
労働者災害補償保険法の学習法
労災保険法は保険給付の各要件、手続き規定の内容を押さえることが大切です。細かい請求手続き規定などよりも基本的な内容をしっかり押さえることで得点できる科目です。
短期合格のコツ
労災保険法からはあまり難解な問題は出題されていませんので、保険給付を中心に基本的な項目について幅広く理解することがポイントとなります。
項目 | 優先度 |
業務災害・通勤災害の認定 | ★★ |
給付基礎日額 | ★★☆ |
保険給付の通則 | ★★★★★ |
療養補償給付 | ★★★★ |
休業補償給付 | ★★★★ |
傷病補償年金 | ★★★★ |
障害補償給付 | ★★☆ |
介護保障給付 | ★★★ |
遺族補償給付 | ★★★ |
二次健康診断等給付 | ★★☆ |
通勤災害に関する給付 | ★★★ |
損害賠償、他法との調整 | ★★★☆ |
特別支給金 | ★★★★ |
特別加入 | ★★★★ |
給付制限・費用徴収・不服申立・雑則等 | ★★★ |
雇用保険法
雇用保険法は雇用全体の安定を図ることを目的とする法律です。 雇用保険は労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が職業教育訓練を受けた場合に必要な給付を行います。雇用保険は失業等給付を行うほかに、雇用安定事業、能力開発事業、雇用福祉事業を行うことができます。
出題傾向
雇用保険法からは失業給付が継続して出題されています。 給付金や助成金、手続きや届出に関してもよく出題されます。改正が多く、改正点からの出題が目立ちます。
雇用保険法の学習法
基本手当(一般にいう失業保険のこと)の基本事項を重点的に押さえることが必要です。基本手当のほかには雇用継続給付、教育訓練給付なども重要です。改正については常に最新情報をチェックしておきましょう。
短期合格のコツ
基本的な内容を理解しておけば解ける問題が比較的多いので、基本手当を中心にテキストを熟読し、過去問題集を繰り返すのが効率的です。
項目 | 優先度 |
総則 | ★★★★ |
失業等給付の基本事項 | ★★★★★ |
一般被保険者の求職者給付(基本手当) | ★★★★★ |
基本手当以外の求職者給付 | ★★★☆ |
高年齢求職者給付金 | ★★ |
特例一時金 | ★ |
就職促進給付 | ★★★☆ |
教育訓練給付 | ★★★ |
雇用継続給付(高年齢・育児・介護) | ★★★☆ |
雇用三事業 | ★★★ |
給付制限・雑則 | ★★ |
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
労働保険の保険料の徴収等に関する法律は、労働保険(労災保険と雇用保険)の事業の効率的な運営を図るため、労働保険の保険関係の成立及び消滅、労働保険料の納付の手続き、労働保険事務組合等に関して必要な事項を定めています。一般的に「徴収法」と呼ばれます。
出題傾向
労働保険料の納付手続きを中心として、択一式試験で労災保険法と雇用保険法とあわせて出題されます。
労働保険の保険料の徴収等に関する法律の学習法
労働保険料の額及び納付の手続きについて定めた法律ですので、具体的に保険料額の計算や納付金額についても理解する必要があります。
短期合格のコツ
賃金総額、保険料の額、追徴金など労働保険料全般を重点的に学習する必要があります。計算問題にも慣れておいた方がよいでしょう。
項目 | 優先度 |
総則 | ☆ |
保険関係の成立及び消滅 | ★★★★ |
保険関係の一括 | ★★★★ |
労働保険料全般 | ★★★★★ |
メリット制 | ★ |
概算保険料 | ★★★★☆ |
確定保険料 | ★ |
印紙保険料 | ★★★ |
時効・不服申立・罰則等 | ★★ |
労働保険事務組合 | ★★★★ |
まとめ
労働保険の科目を学習しようとする人は、既にある程度は社労士試験の勉強が進んでいる人かもしれませんね。短期合格を目指している人であれば、限られた時間のなかで、出題される可能性の高いものを重点的に学習したいと考えているのではないでしょうか。項目ごとの優先度が効率的な学習の参考になれば幸いです。
労働基準法と労働安全衛生法の試験対策についてはこちらの記事でご紹介します。
健康保険法と年金法の試験対策についてはこちらの記事でご紹介します。
社労士の独学勉強法についてはこちらの記事でご紹介します。